- 世界四大栗 -

クリはブナ科クリ属の落葉・高木性の植物で、その原生地はアジア、欧州、アメリカ、アフリカの四大陸にまたがり、北半球の温帯域の山野に広く分布・自生しており、世界には十二種類ほどのクリが存在します。これらのクリの産地は12℃の等温線を中心に分布しており、温帯の中~北部に存在します。
果樹として栽培されている栗には、大きく分けて、日本グリ(和栗)、西洋栗グリ、中国グリ、アメリカグリの四種類があります。栗は英語で「chestnut」、フランス語で「marron」や「châtaigne」の名を持ち、学名のCastaneaは、ギリシャ語の castana(栗)に由来するラテン語です。これが転じ、栗を意味する「chest」という単語が生まれ、その実(nut)ゆえにchestnut(栗の実)と呼ばれるようになりました。
フランス語では本来、マロンはマロニエの実を指す単語でしたが、マロングラッセを栗で作るようになってから栗もマロンと呼ぶようになったとされます。食用にアク抜きが必要なマロニエの実は、現代ヨーロッパでは常食されていません。余談ですが、フランスでは果皮の中に大きな栗が入ったものをマロン、複数の実が入ったものをシャテーニュと使い分けています。

日本グリ(和栗)Castanea crenata

丹波栗

日本原産。野生のシバグリ(柴栗、芝栗)を品種改良したもので、果実が大きく風味が良いのが特徴。一方、甘みはやや少なく、渋皮が剥がれにくく果肉は割れやすい。果肉の色は黄色。
品種は早生・晩生をあわせて100種ほど。筑波、伊吹などがあり、古来より名高い丹波栗も和栗に含まれます。栗は同じ品種でも気候や風土でもその味は大きく変わります。
和栗は原産地である日本国内だけではなく、古くから朝鮮半島などのユーラシア大陸東部にも自生しており、産地が日本ではない和栗も市場に流通しています。また、変種も多く存在します。

※音衛門では
「天(和栗・国産丹波栗)」や「山清(和栗・韓国産)」といった栗のテリーヌや栗いっぱいのパウンドケーキ、栗納豆などに、この種の和栗も使用しています。

西洋グリ Castanea sativa

欧風・焼き栗

南東欧ないし西アジア原産といわれ、現在はイタリア、フランス、スペインなど欧州広域に分布している欧州を代表する栗です。
一般に「マロン」と呼ばれる実を結び、古代ローマ時代には幾つかの品種が作られていたと言われます。日本栗よりやや小さく、渋皮が剥きやすく果肉がしまっていますが、粘り気は少ないのが特徴です。栗粉で作るポレンタといった料理や菓子に広く使われますが、大栗は代表的菓子である「マロングラッセ」の原料に、小栗は焼き栗としての食べ方がよく知られています。病気や害虫に弱く、日本国内ではあまり栽培されていません。

※音衛門ではmarrone dolce、マロンいっぱいのパウンドケーキ、マロングラッセやマロンコンフィをはじめとして、栗のテリーヌ類になどではこの種の西洋グリも使用しています。

中国グリ Castanea mollissima

中国華北地方原産。甘栗(天津甘栗)と呼ばれ、やや小型で渋皮を剥きやすく、果肉はしまって割れにくいのが特徴です。甘みが強く、渋皮がタンニンによって実に密着しない為、炒ったものを焼き栗として食べるのが定番ですが、硬く調理には向きません。栗の害虫であるクリタマバチの被害を受けやすく、哲西栗などの一部を除けば日本国内ではあまり栽培されていません。
中国大陸産の中国グリは天津港が伝統的に主な海外出荷拠点であった為、天津甘栗の通称を持ち、原料として使われるのは、板栗(バンリー/Banli)という品種です。朝鮮半島産の中国グリは平壌栗と呼ばれ、日本国内では朝鮮栗、朝鮮甘栗とも呼ばれています。
シナグリとは別種の野生種に錐栗/ヘンリーグリ(Castanea henryi)、茅栗/モーパングリ(Castanea seguinii Dode)があり、これらは北米でも栽培されています。

アメリカグリ Castanea dentata

北米原産。別名「アメリカンチェスナット」。
果実の品質が良く、木材としても優れた品種でしたが、1904年にニューヨークから発生した「焼き枯れ病(胴枯病)」で壊滅。現在でも北米の一部で栽培されているものの、市場では殆ど流通していません。病気に弱く日本国内での栽培は困難です。渋皮は剥きやすく、果肉は粉質で甘味が多く、クリ属の中でも香気に優れます。
アメリカグリとは別種の北米野生種に、ドングリに似た実のチンカピン(チンカピングリ/Castanea pumilla,ワイ性チンカピン/Castanea alnifolia,Castanea ashei,フロリダチンカピン/Castanea floridana,Castanea paupispina)も存在します。